【独自】三井物産の洋上風力事業に灯る黄信号。雲行きが怪しいのは三菱商事だけではない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
風力発電の風車
メーカー間の開発競争で、風車の大型化が進んだ(写真:twabian / PIXTA)

三菱商事連合への救済策は、まさに「弱り目にたたり目」──。そう恨めしく思っているであろう事業者がいる。国の大規模な洋上風力発電プロジェクトの第2回公募入札(第2ラウンド)において、落札事業者に選ばれた三井物産などの企業連合だ。

三井物産とドイツの電力大手RWEの子会社、大阪ガスがつくる企業連合は2023年12月、新潟県村上市・胎内市沖(村上・胎内)の海域を占有できる発電事業者に選ばれた。応札したのは三井物産連合のほか、東京電力リニューアブルパワー連合、JERA連合などの4事業者だった。

開発中の最新鋭機を採用

ただ、村上・胎内の海域には大きな問題があった。肝心要の風が「弱い」のだ。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の風況マップによると、年平均風速は毎秒6メートル弱。それに対し、三菱商事連合が落札した秋田県能代市、三種町および男鹿市沖の年平均風速は毎秒約7メートルある。この差は大きい。前提条件にもよるが、毎秒1メートルの差があると、年間発電量が5割程度変わってくる。

こうした条件の下で売電収入の最大化を図る手段が、単機出力の高い大型風車の採用だった。1基当たりの発電出力が大きければ、設置基数を少なくでき、工事費用も削減できる。この洋上風力業界の定石にのっとって、三井物産連合以外の3事業者は、デンマークのベスタス社が21年に市場に投入した新型機(出力1万5000キロワット)を採用する計画とした。

一方の三井物産連合は、入札で勝つために他事業者とは違う一手に出た。採用したのは、米GEベルノバ社が開発中の最新鋭機(同1万8000キロワット)だった。

他事業者よりもさらに単機出力の大きい風車を採用し、より少ない基数で大きな発電設備総出力を実現するとしたのだ。実際、三井物産連合の示した計画は、インベナジー・ウインドより風車の基数が少ないが、発電設備総出力は上回っている。これが三井物産連合の勝因の1つとなった。

だが、三井物産連合が落札してから程なく、GEベルノバは1万8000キロワット機よりも一回り小さい中型機に集中するという方針を公表。1万8000キロワット機の導入が決まっていた米国のプロジェクトへの供給も撤回した。

本記事の詳報版は、東洋経済オンライン有料版記事「〈詳報記事〉【独自】三井物産「洋上風力プロジェクト」甘い読みと誤算。三菱商事だけではない」でご覧いただけます。
大塚 隆史 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事